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悲劇の美女、タマル
(サムエル記下13139

                                             石川和夫牧師
  
 「その後、こういうことがあった。ダビデの子アブサロムにタマルという美しい妹がいた。ダビデの子アムノンはタマルを愛していた。」(サムエル記下13・1)
 タマル(ヘブライ語で「日付」)は、ダビデ王とその妻マアカの間に生まれた美しい娘でした。しかし、美女、必ずしも幸せとは限らないということの典型的な事件が起こります。腹違いの兄、アムンンに愛されるのです。聖書は、そのように書いてはいるのですが、本当に愛する、というよりも欲望を抱いたという方が正確のようです。アムノンは、ダビデ王の長男ですから、当然、王位継承者でした。しかし、「妹タマルへの思いにアムノンは病気になりそうであった」(2節)のです。
 それを見かねた「知恵者」が現れます。彼の従弟のヨナダブです。ヨナダブの入れ知恵によって、彼は病気を装って、ダビデから、彼女に看病してもらう許可を得ます。彼は他の人々を部屋から出して、彼女を犯します。目的を達した彼は、いきなり彼女が大嫌いになります。恋愛の楽しさは、やはり、その過程にあるようです。
 「その憎しみは、彼女を愛したその愛よりも激しかった」(15節)とあります。アムノンの愛は、横暴な「男の欲望」に過ぎなかったのです。「立て、出て行け。」と言い、引き下がらせた従者を呼んで、「この女を追い出せ。追い出したら戸に錠を下ろせ」と命じます(17節)。ひどいですね。
 この結果、彼女は「絶望して兄アブサロムの家に身を置」(20節)くことになります。聖書は、その後の彼女に一切触れていません。どうなったのでしょうか?ひょっとすると病気にかかり、一生淋しく、悲しく過ごしたかも知れません。聖書が男性中心でかかれていると批判される所以です。
 「アブサロムはアムノンに対して、いいとも悪いとも一切語らなかった。妹タマルを辱められ、アブサロムはアムノンを憎悪した」(22節)のに対して、「ダビデ王は事の一部始終を聞き、激しく怒った」(21節)のですが、それだけでした。ダビデもタマルを結果的には無視したのです。アムノンが王位継承者だったからでしょうか?結局、二年後、アブサロムはアムノンを殺します。自分が王位継承者になろうという魂胆もあったかも知れません。アブサロムも後に、クーデターを起こして殺されます。ダビデの父としてのだらしなさが、ソロモンを王位につけたことになったのでしょうか?