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親不孝の代名詞となったアブサロムの母、マアカ

                      (サムエル記下3・3
                                            石川和夫牧師
  

「三男はアブサロム、ゲシュルの王タルマイの娘マアカの子」(サムエル記下3・3、歴代志上3・2)。
 エルサレムのキドロンの谷、東側の丘腹に、アブサロムの墓と呼ばれる石像記念物が残っています。無数の石がぶっつけられたらしい跡が残り、傷だらけです。イスラエルの人にとって最も大事で誇りにしているダビデ王を苦しめたからです。アブサロムという名は、親不孝の代名詞なのです。(サム下18・18)
 そのアブサロムの母、マアカは、どのような気持ちで生きたのでしょうか。聖書には、そのことについて一言も触れてはいません。ただ、想像するよりほかはないのですが、決して幸せだったとは言えなかったと思います。
 マアカは、ゲシュルの王タルマイの娘と記録されています。ゲシュルというのは、上ヨルダン川東岸の地、アラムの小国の一つでした(サム下15・8)。イスラエルは、かつてここを占領しませんでした(ヨシュア記13・13)。ダビデは、この国と友好関係を結ぶために、この国の王の娘マアカを妻の一人として迎えます。彼女の産んだ息子が、ダビデにとっては三男になるアブサロムだったのです。
 アブサロムは美貌をうらやまれるほどでしたが(サム下14・25)、短慮であったため悲劇的な運命を辿ることになります。同じ母から生まれた妹タマルが異母兄アムノンに犯されて捨てられたことに腹を立て、二年後に彼を殺して、母方の郷里ゲシュルに三年間逃れます。ダビデの従兄弟の軍司令官ヨアブの執り成しで、エルサレムに帰ることが出来たのですが、ダビデが取り合ってくれなかったことに腹を立て、クーデターを起こして、ダビデを追い出し、自ら王位につきます。このことがダビデをひどく苦しめました。反逆者は、殺されなければなりませんが、それがわが息子となると、子煩悩なダビデには地獄の苦しみになるのです。結局、アブサロムは殺されて、一件落着するのですが(サム下15〜18章)ダビデにとって大きな心の傷となって残ります。
 政略結婚でダビデ王の妻となったマアカでしたが、息子の死後、彼女の晩年は、きっとさびしいものであったに違いありません。故郷に帰ったまま、二度とエルサレムには戻れなかったのではないでしょうか。その悲しさと寂しさが、どのように癒されたのでしょうか?