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見事、王の母となったバト・シェバ

                        (サムエル記下11126
                                            石川和夫牧師
  

 

 「ダビデのしたことは主の御心に適わなかった。」(サムエル記下11・27)
 有名なダビデとバト・シェバの結婚にまつわる物語の結びの言葉です。しかし、次の章で、預言者ナタンの追及によって、ダビデが悔い改めたことを報じます。ヘト人ウリヤの妻との不倫の結果を誤魔化そうとして前線にいたウリヤを呼び戻し、丁重にもてなし、贈り物まで与えて、彼をバト・シェバのもとに帰そうとするのですが、恐らく、根っからの真面目な職業軍人だった彼は、上官をはじめ、戦友たちが野営しているのに、それは出来ないと王宮の入り口で戦友と共に寝ます。こうして、ダビデは罪に罪を重ね、司令官のヨアブに命じてウリヤを戦死させ、強引に彼女を妻にしてしまいます。
 二人の間の最初の子は死にますが、その次に生まれたのが、ソロモンです。結果的に、彼がダビの王位を継承します。ダビデには、正妻との間の息子だけで、十七人もいました。生まれた順番で言えば、ソロモンは十番目です。それでありながら、彼は王位を継承したのですから、最後の将軍、徳川慶喜(彼は七男)と似ています。慶喜の場合は、将軍に不満を抱いた外様大名たちの策略があったと言われていますが、ソロモンの場合は、どうでしょうか?
 ダビデの長男アムノンは、腹違いの妹タマルを犯したために、二年後、彼女の兄、三男のアブサロムに殺されます。そのアブサロムは、黙っていれば、当然の順番として王位を継承することとなったと思うのですが、生来、せっかちのアブサロムは、待ちきれなかったのと、周囲の人々におだてられて、クーデターを起こして失敗し、殺されてしまいます。これを機に、ダビデに強い影響力を持った預言者ナタンの協力を得て、バト・シェバは老いたダビデに息子ソロモンの即位を迫ります。こうして、ソロモン王が生まれました。
 ハーパー聖書注解は、サムエル記下の注解で、「本書の最初の数章はソロモンがダビデの王座を奪取したことを描いている。そこで描かれている状況は疑わしい。」と書いています。聖書では、神が導いた結果だとしているのですが、聖書には書かれていないバト・シェバの秘策があったように思われてなりません。ひょっとすると、沐浴の姿がダビデに見られたのも彼女の計算の中に入っていたのでは、とも考えさせられます。「成功」を目指した彼女のしたたかさは、極めて現代的ではないでしょうか?