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不運と戦ったタマル

(申命記25・5、6)

                                             石川和夫牧師
  

 タマルは、ヤコブとレアの間に生まれた第四子、ユダの長男エルの妻です。不運にも、夫が早死にしたので、当時の決まり(申命記25・5、6)に従って、次の弟オナンと結婚します。ところが、オナンも早死にしたので、その次の弟、シェラと結婚するはずでした。しかし、ユダはシェラも同じように早死にするのではないかと心配して、シェラが幼いことを口実にタマルを実家に帰します。
 ユダは、エルもオナンも「主の意に反した」ので、早死にしたことに気づかないで、早死にの原因がタマルにあると判断したようです。今でも良くあることです。そして、タマルにシェラが成人するまで待てと言ったことを忘れてしまいます。
 かなりの年月がたって、タマルは、ユダが彼女の住んでいるところの近くに来ることを知り、神殿娼婦に化けてユダに近づき、代金の保証として、彼の紐のついた印章と杖を受け取って、彼に身を任せました。彼女は身ごもります。そのことが、ユダの耳に入ります。ユダは彼女を姦淫の罪で処罰しようとするのですが、証拠の品をつきつけられて、素直に自分の罪を認めます。
 「わたしよりも彼女の方が正しい。わたしが彼女を息子のシェラに与えなかったからだ。」(38・26)
 こうして、タマルは双子のペレツとゼラを産みます。こうして、彼女の名は、新約のマタイによる福音書の冒頭の「イエス・キリストの系図」に登場する四人の異邦人の女性の一人として永遠に名を留めることとなりました。キリストの系図には、どろどろとした人間のありのままの姿が秘められているのです。