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薄幸のエリの嫁、ピネハスの妻

                         (サムエル記上4122
                                            石川和夫牧師
  
  祭司エリの息子たち、ホフミとピネハス(エジプト語で「黒人」)は「ならず者で、主を知ろうとし」(2・12)ません。そういう人の妻には、きっと色々な苦労があったと思います。どうして、このような人と結婚したのか、聖書は全く語っていません。
 この二人の兄弟は、親の職権を乱用して、生け贄の最上の部分を横取りし、神殿を訪れる女性を誘惑していました(2・13〜17、22)。このことで父エリは息子たちを諭すのですが、彼らは一向に聞き入れませんでした。このために主の怒りが臨むことになります(2・17、3・11〜14)。
 イスラエル人がアフェクでペリシテ人と苦戦している時、二人は兵士の士気を挙げるため神の箱を戦場に届けさせられました。そのため兵士の士気は大いに上がったのですが、それ以上に、ペリシテ人の士気を鼓舞してしまいます。結果は、またもや戦いに敗れ、ピネハスもホフニも殺されてしまいます。その知らせを聞いた九八歳のエリは、ショックで急死してしまいます。最悪の結果が訪れたのです。
 妊娠していたピネハスの妻は、このショッキングな知らせを聞いて、急に産気づきます(4・19)。しかし出産した子の顔を見ようともせず、「栄光はイスラエルを去ったと考えて、彼女は子供をイカボド(栄光は失われた)と名付け(4・21)、「栄光はイスラエルを去った。神の箱が奪われた」(4・22)と言って死にます。
  何と言う悲惨な生涯でしょうか。彼女に同情を禁じ得ないのですが、夫も義父も死に、神の箱が奪われても「栄光はイスラエルを去った」のではないのです。自分で絶望と断定した彼女と、なお主を呼びつづけた十字架上のイエスとの違いを思います。