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地味なダビデの妻、アヒノアム
石川和夫牧師
「ダビデはイズレエル出身のアヒノアムをめとっていたので、この二人がダビデの妻となった。」(サムエル記上25・43)
「アヒノアム」という名前は、このように突如、現われます。「この二人」というのは、すでに学んだ「才色兼備の女性」アビガイルとアヒノアムです。サムエル記の著者には、アビガイルばかりが目立って、アヒノアムのことは、まるで眼中に無いみたい、ああ、そう言えば、そういうな二の人もいたな、という感じです。
聖書には、このように、名前だけ出ていて、何をし、どういう人だったのか全く分からない人が大勢います。このアヒノアムもそのような一人です。しかし、時々名前が出てきますので、想像することはできます。
アヒノアム(へブル語で「兄弟は善良である」)は、イズレエル人でした(サム下3・2)。ユダ山地の町で、ヘブロンの南西九・六キロの所です。(聖書には、その他にも、同じイズレエルの名で異なる場所が三ヵ所あります)ダビデがサウル王に追われてパランの荒野にいた頃、あのアビガイルと共に、ダビデの妻となりました。
ダビデがペリシテ人の王アキシュのもとにかくまわれた時もアビガイルと共に、ガトのツィクラグに住みます。ダビデが戦いに出ている間に、アマレク人に襲われ、そこにいた女たち、年若い者から年寄りまで共に、捕虜になってしまいますが、後に、ダビデに救い出されます(30・1〜20)。彼女にまつわる出来事は、それだけなのですが、見逃せないことは、彼女が、ダビデの長男を産んでいることです(サム下3・2)。
このアムノンは、腹違いの妹タマルに横恋慕して犯して捨てたため、彼女の兄、彼からすれば、義理の弟、ダビデの三男、アブサロムに殺されるという悲劇に巻き込まれて命を落とします(サム下13・1〜39)。この間、母のアヒノアムについては、聖書は一切語っていません。歴史は男性によって動かされる、という考え方のせいでしょうか?
彼女は、何も言えず、何も出来ず、ただ黙って耐えているだけだったのでしょうか?あの時代の女性としては、それが自然だったかもしれません。しかし、たった一人の息子を失った彼女の晩年は、幸せだったのでしょうか?おそらく、その深い悲しみを胸の奥に秘めて、じっと耐え抜いたのでしょう。王家の華やかさには、このような女性の悲しみが秘められていたのです。