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差別の犠牲者、コスビ
(民数記25・15)

                                             石川和夫牧師
  

「殺されたミディアン人の女の名はコスビといい、ミディアン人の部族の父祖の家の長であるツルの娘であった。」(民数記25・15)
 ミディアン人は、本来、モーセにとって恩人でした。エジプトの宮殿にいた時、モーセは同胞が苦しめられているのを見かねて、エジプト人を殺してしまいます。宮殿にいられなくなったモーセは、ミディアンの地に逃げ、彼らにかくまってもらったのです。
 しかし、エジプト脱出の長く厳しい旅の間、モーセは外敵ばかりでなく、わがままなイスラエルの民とも戦わなければなりませんでした。特に、宗教的な訓練は、私たちから見ると、異常なまでに厳しいものでした。
 目的地カナンに進入するために、ヨルダン川の東側、モアブの地に到達するのですが、イスラエルの民は、モアブの娘たちにせがまれて、彼らの豊穣神をいっしょに拝んだのです。この礼拝には、みだらな性行為を伴っていました。バアルの神がもてはやされたのには、このような側面もあったようです。
 コスビが殺された「奥の部屋」もそのような目的のための部屋だったようです。従って、イスラエルの中に、このような宗教が蔓延することは、単に偶像礼拝にとどまらない無秩序をもたらす危険もあったのでしょう。
 それにしても、宗教的な秩序、律法に限らず、あらゆる秩序を守ろうとすることが目的となると愛が失われます。コスビは、秩序維持から生まれた差別の犠牲者でした。