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ライバル姉妹、レアとラケル
(創世記30章)

                                             石川和夫牧師
  

 創世記30章は、まるで「出産競争」のように、レアとラケルの出産のことが描かれています。
 自分に子どもができないと知ると、それぞれの召使いのジルパとピルハをヤコブの側女として与えて、子どもを産ませます。いじらしいほどの「女の執念」すら感じさせられます。
 それというのも、事の起こりは、ヤコブが双生児の兄エサウを騙して、家督相続の権利を奪ったことにあります。身の危険を感じたヤコブは、母リベカの兄、つまりヤコブの叔父のラバンの所に身を潜めます。ところが、このラバンもさすが、ヤコブの叔父、したたかな人だったのです。
 滞在一ヶ月目に、ラバンがヤコブに報酬を与えると提案したので、ラバンの二人の娘、レアとラケルのうち、妹のラケルと結婚させてくれるなら、七年間働くと約束します。「レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた」(創世記29・17)からです。
 「ヤコブはラケルのために七年間働いたが、彼女を愛していたので、それはほんの数日のように思われた」(29・30)。純情物語です。ところが約束の七年が経って盛大な結婚式を挙げてくれたのはいいのですが、ラバンは姉のレアをヤコブに与えて、翌朝になって、そのことに気づくのです。こうして、ラケルのために、もう七年働くことになります。
 騙す人は、結局、騙される人でもあるのです。後に、ラケルは難産のために死にますが、ラケルの墓は、今も嘆きの母たちの悲しみの場所となっています。